膠原病について

膠原病とは、ひとつの病気の名前ではなく、「感染症」や「腎臓病」と同じように、いくつかの病気が集まった

グループを表す言葉です。

皮膚や内臓の結合組織(いろいろな組織の間にある膠原線維などからなる部分)や血管に炎症・変性を起こし、

さまざまな臓器に炎症を起こす病気の総称です。

全身性エリテマトーデス

  

 この病気は、英語でsystemic lupus erythematosus

 いい、その頭文字をとってSLEと略して呼ばれます。

 systemicとは、全身のという意味で、この病気が全身のさま

 ざまな場所、臓器に、多彩な症状を引き起こすということを

 指しています。 

 lupus erythematosusとは、皮膚に出来る発疹が、狼に噛

 まれた痕のような赤い紅斑であることから、こう名付けられま

 したlupus、ループス:ラテン語で狼の意味)。

 発熱、 全身倦怠感などの 炎症 を思わせる症状と、関節、皮膚、

 そして腎臓、肺、中枢神経などの内臓のさまざまな症状が一度

 に、あるいは経過とともに起こってきます。その原因は、今の

 ところわかっていませんが、免疫の異常が病気の成り立ちに

 重要な役割を果たしています。

 

皮膚筋炎/多発性筋炎

 

多発性筋炎・皮膚筋炎は筋肉の 炎症 により、筋肉に力が入り

 にくくなったり、疲れやすくなったり、痛んだりする病気です。

 また、手指の関節背側の表面ががさがさとして盛り上がった

 紅斑(ゴットロン 丘疹 )、肘関節や膝関節外側のがさがさした

 紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロ

 ープ疹)などの特徴的な皮膚症状がある場合は、皮膚筋炎と

 呼ばれます。なお、ゴットロンは医学者の名前、ヘリオトロープ

 は紫色の花を付ける可憐な植物の名前ですが、日本人のヘリ

 オトロープ疹が紫色になることは殆どありません。多発性筋炎

 ・皮膚筋炎でも、他の膠原病と同じく、筋肉と皮膚の症状以外

 にも様々な症状が現れます。関節痛は頻度が高く、そのため、

 リウマチ性疾患に含められることもあります。その他、肺も症

 状を起こしやすい臓器です。  

 


シェーグレン症候群

 

 シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリ

 ック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけ

 られた疾患です。

 本疾患は主として中年女性に好発する涙腺と唾液腺を標的と

 する臓器特異的自己免疫疾患ですが、全身性の臓器病変を伴

 う全身性の自己免疫疾患でもあります。シェーグレン症候群は

 膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚

 筋炎、混合性結合組織病) に合併する二次性シェーグレン症候

 群と、これらの合併のない原発性 シェーグレン症候群に分類

 されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若年性突発性関節炎

 

 若年性(じゃくねんせい)=16歳未満、特発性(とくはつせい)

 =原因不明の意味で、16歳未満の子どもさんに発症した6

 間以上続く(=慢性)関節の 炎症 を若年性特発性関節炎と呼

 びます。国際リウマチ学会(ILAR)の分類基準により7つの病

 型に分けられています。そのうち小児期発症特有の病型は、

 「全身型」、「少関節炎」、「 リウマトイド因子 陰性多関節炎」、

 「リウマトイド因子陽性多関節炎」で、後者3つは関節型JIAとも

 呼ばれます。「全身型」は、1か所以上の関節炎に2週間以上続

 く発熱を伴い、それに皮膚の発疹、全身のリンパ節の腫れ、肝

 臓や脾臓の腫れ、漿膜炎のいずれかがあるものをさします。

 「少関節炎」は、発症6か月以内の関節炎が14か所にとどま

 るもので、関節炎が全経過を通して4か所以下の“持続型”と、

 発症6か月以降に5か所以上に増える“進展型”に分けられます。

 「リウマトイド因子陰性多関節炎」「リウマトイド因子陽性多関節

 炎」は、発症6か月以内の関節炎が5か所以上に見られるもの

 で、それぞれリウマトイド因子が陰性または陽性のものです。

 リウマトイド因子とは、ヒトのもつ 免疫グロブリン GIgG)に

 対する 自己抗体 で、リウマチ性疾患の患者さんの血液中に

 しばしば見られます。 

 


再発性多発軟骨炎

 

  骨とともに骨格を形作っている軟骨に原因不明の炎症が繰り

 

 返し起きる(再発性)疾患です。炎症が継続する場合には軟骨

 は変形・消失します。おかされる軟骨としては耳介軟骨が多く、

 次いで気道、眼、鼻、関節等が続きます。

 その炎症部位によって症状や重症度が定まってきます。気道軟

 骨炎は気道狭窄や閉塞をきたす可能性があり、さらに頻度は

 低いものの臓器の重要性によって心臓や脳の病変も生命を脅

 かす恐れがあります。

 変形・消失した軟骨は元には戻りません。

 そのため早期の診断・治療がとても重要となる希少疾患です。

 

 

 

 

 

原発性抗リン脂質抗体症候群

 

 抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome,  APS)は血中に抗リン脂質抗体とよばれる 自己抗体 が存在し

 さまざまな部位の動脈 血栓症 や静脈血栓症、習慣流産など

 の妊娠合併症をきたす疾患です。APS患者さんの約半数が全

 身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus,  SLE)を合併し、二次性APSとよばれますが、SLEを合併しな

 い患者さんも約半数おり 原発性 APSとよばれます。

 

 

 

家族性地中海熱

 

 家族性 地中海熱(Familial Mediterranean feverFMF

 は発作性におこる発熱と腹部、胸部の疼痛や関節の腫れなど

 の症状が繰り返される遺伝性の病気です。

 

 

TNF受容体関連周期性症候群

 

 腫瘍 壊死 因子(Tumor necrosis factorTNF)は 炎症

 や免疫反応に於いて重要な役割をはたす物質の一つであり、

 各種細胞の表面にある受容体に結合してその内部に刺激を

 伝え、病原体や腫瘍から身体を守る働きを担っています。

 その受容体(1TNF受容体:TNFR1)をコードする遺伝子 

 (TNFRSF1A)の異常により、周期的に発熱を繰り返す遺伝性

 の疾患がTRAPSTNF receptor-associated periodic  syndrome)です。

 発熱に加えて筋痛・関節痛・発疹・目の周りのむくみや結膜炎・

 腹痛などの発作が認められ、3日から数週間に及ぶ比較的長

 期間の発作を繰り返すのが特徴です。

 

 

 

 

 

 

中條・西村症候群

 

 子供の頃から発熱や赤い発疹などを繰り返す「自己炎症疾患」

 の1つです。徐々に顔や腕の脂肪が減ってやせていく「脂肪萎

 縮症」でもあります。昭和14年に東北帝国大学皮膚泌尿器科

 の中條敦先生、昭和25年に和歌山県立医科大学皮膚泌尿器科

 の西村長應先生が最初に報告されたので、この名前があります。

 長く日本だけの病気とされていましたが、最近、同じ病気と思

 われる患者さんが海外からも報告されています。

 

化膿性無菌性関節炎

 

 常染色体優性の遺伝形式をとる稀な自己炎症性疾患です。

 病名のとおり、化膿性無菌性関節炎、 壊疽性膿皮症、アクネ

 (ざ瘡・にきび)を特徴とする病気です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インタロイキンI受容体拮抗分子欠損症 

 

 インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症は、

 2003年にPicardらによって初めて報告された疾患で、Toll

 様受容体(TLR)のシグナル伝達を担う分子IRAK4遺伝子の

 異常により生じる常染色体劣性遺伝形式の疾患です

 本邦でも数例の症例報告が為されていますが、実態は明らか

 ではありません。

 IRAK4欠損症及び関連分子であるMyD88欠損症 は、類似

 した表現型としてグラム陽性菌(特に肺炎球菌や黄色ブドウ

 球菌)による感染症が重症化(敗血症、細菌性髄膜炎)すること

 が報告されています。

 

全身性強皮症

 

 強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症()があり、両者は

 全く異なる疾患ですので、この区別がまず重要です。

 限局性強皮症は皮膚のみの病気で、内臓を侵さない病気です。

 一方、全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなる変化(硬化)ある

 いは線維化が特徴です。

 国際的には全身性強皮症を大きく2つに分ける病型分類が

 広く用いられています。つまり、典型的な症状を示す「びまん

 皮膚硬化型全身性強皮症」と比較的軽症型の「限局皮膚硬化

 型全身性強皮症」に分けられています。

 前者は発症より56年以内は進行することが多く、後者の軽

 症型では進行はほとんどないか、あるいはゆっくりです。

 この病型分類のどちらに当てはまるかによって、その後の病気 

 の経過や内臓病変の合併についておおよそ推測できるように

 なりました。

 

混合性結合組織病

 

 混合性結合組織病(Mixed Connective Tissue Disease

 ;MCTD)は、1972年にアメリカのSharpらにより、膠原病の

 代表的疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)様、強皮症様、

 多発性筋炎様の症状が混在し、血液の検査で抗U1-RNP抗体

 が高値陽性となる疾患として提唱されました。

 欧米ではMCTDは強皮症の亜型だとする意見が多かったの

 ですが、最近では独立した疾患として再認識されてきています。

 わが国では1993年に厚生労働省が特定疾患に指定したこと

 もあり、MCTDの病名は広く受け入れられています。

 

クリオピリン関連周期熱症候群

 

 NLRP3遺伝子 変異 を原因とし、発熱等の 炎症 が体質的に

 おこってくる病気です。軽症型の 家族性 寒冷蕁麻疹、中等症

 のマックル-ウェルズ症候群、重症型のCINCA症候群/NOMI

 D3症候群を含みます 

 

ブラウ症候群

 

 ブラウ症候群は、皮膚と関節そして眼にサルコイドーシスと呼

 ばれる病気によく似た 肉芽腫 ができる病気です。

 1985年にアメリカの小児リウマチを専門とするブラウ医師に

 よって、皮膚と関節そして眼に4世代に渡って肉芽腫を来す家

 族が報告されたのが家族例としては最初の報告であり、この

 ためブラウ症候群と呼ばれます。この病気を起こす原因遺伝

 子は、消化管に肉芽腫をつくるクローン病とほぼ同じ場所に

 位置する遺伝子なのではと推定されていましたが、2001

 になってクローン病の発症に関わる遺伝子の1つとしてNOD

 2という遺伝子が 同定 されると、ブラウ症候群でも同じNO

 D2遺伝子に遺伝子異常があることが分かりました。

 しかしながら、クローン病とブラウ症候群では同じNOD2遺伝

 子に異常を認めますが、遺伝子異常の位置は2つの病気では

 異なり、クローン病ではNOD2が機能を失ってしまうのに対

 して、ブラウ症候群では逆に常に活性化してしまうという違い

 があることが知られています。

 

IgD症候群

 

 MVK (mevalonate kinase、メバロン酸キナーゼ) 遺伝子

 変異を原因とし、発熱などの 炎症 が体質的に起こる病気です。

 軽症型の高IgD症候群から重症型のメバロン酸尿症までをま

 とめて、メバロン酸キナーゼ欠損症と呼ばれます。

 

 

 

 

慢性再発性多発性骨髄炎

 

 子供が手足の痛みを訴えても、殆どの場合はすぐに回復しま

 すが、まれに慢性に経過して詳しい検査が必要になる場合が

 あります。

 感染症や腫瘍が否定され、 非特異的 な骨髄の 炎症 と周囲の

 骨吸収を認める病態を、慢性非細菌性骨髄炎(Chronic

 Nonbacterial OsteomyelitisCNO)と診断しますが、

 CNOの病変が多発性・慢性・再発性に認められる病気が慢性

 再発性多発性骨髄炎(Chronic Recurrent Multifocal  OsteomyelitisCRMO)です。小児に多いと考えられてい

 ますが、成人に発症する事もあり、関節炎・掌蹠膿胞症・尋常性

 乾癬 ・ 炎症性 腸疾患などの合併が認められます。成人からの

 報告例が多いSAPHOsynovitis, acne, pustulosis,  hyperostosis and osteitis)症候群の一症状として

 CRMOと同様の病変を認める場合があり、両疾患は炎症病態

 の一部を共有する類縁疾患と考えられています。